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ロク-リンシャ

単調な日常を維持するあなたへ捧ぐほんわかマガジン

座談会:『絶対に見るべき最強の展覧会はこれだ!アートランナーが往く東京美術館マラソン2016秋』 ~平安の秘仏-滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち編~

企画の趣旨はイントロダクション参照。
アートランナーたちは上野を駆け抜けます。

エントリーNo.4 平安の秘仏-滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち(東京国立博物館

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賀県甲賀市に所在する天台宗の古刹、櫟野寺(らくやじ)には重要文化財に指定される平安時代の仏像が20体も伝わります。
その数は、優れた仏像が数多く残る滋賀県でも特筆されます。本展は、20体すべてを寺外で展示する初めての機会です。本尊の十一面観音菩薩坐像は像高が3mもある圧巻の作品で、普段は大きく重い扉に閉ざされる秘仏です。重厚感ある堂々とした姿ですが、美しい顔立ちは、見る人に安らぎを与えることでしょう。その十一面観音とともに2.2mある薬師如来坐像が並ぶ様子は壮観といえます。他にも、11体の観音や、どこか親しみのある毘沙門天立像、文治3年(1187)に造られたことが知られる貴重な地蔵菩薩坐像なども出品され、櫟野寺に伝わる平安彫刻の傑作を一時にご覧いただける展覧会です。

公式サイトより)

15時半頃、上野公園を歩く一同。

みつぼり:ようやく、肩身の狭い街から抜け出した気がする。

さいとう:そうだねー。

みつぼり:俺らみたいなのも受け入れてくれる、懐の深さを感じるよね、上野は。

いの:御仏のように懐が深いよね。

さいとう:次の展示は何? 仏像以外にも何か見れたりすんの?

いの:たぶん仏像だけじゃない? それも櫟野寺って寺から持ってきたやつだけ。ストイックだよね。

みつぼり:『宇宙と芸術展』のある意味対極だよね。

いの:それだけ自信があるってことなのかな。よし、行ってみよう!

 

※展示室内の構造について、簡単に説明。中央に今回の目玉である3.12メートルの十一面観音菩薩坐像が鎮座し、それを取り囲むように19体の仏像が並ぶ。寺外初公開の秘仏であり、それら全て重要文化財である。その中でも、十一面観音菩薩坐像の真後ろには、会場内で2番目に大きい2.22メートルの薬師如来坐像があり、周囲の仏像の中でもひときわ存在感を放っている。

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~40分ほどで展覧会を終え、感想タイム突入~

 

いの:お疲れさまでした。えーっと、とりあえず順番は最初に戻って、みつぼり君、感想を。

みつぼり:うーん、あんまり、金払って見るほどでもなぁ、信仰心が無いからかなぁ。思ったのはですね、仏様の顔の彫り方に凝ってる感じは無かったですね。仏様の表情見て、細かいなぁ、美しいなぁとかは無くて。十一面観音菩薩坐像はさすがに立派だと思ったけどね。京都なんかで仏像見た時はもっと素晴らしいなと思ったんだけど、まあ、こんなもんかなと。なんだろうね、背景とかがよく分からないし、別に著名な人が彫ったわけでもないじゃん。何を取っ掛かりにして見たらいいか、よく分かんなかったよね。寺についての説明もあっさりしてたしさ。んー・・・可もなく不可もなくですね。

いの:元・国文学専攻らしい観点からとかは無いっすか。

みつぼり:もっと何か言いたいけど、出てこないっすねー。あそこに一堂に会して展示するほど素晴らしいものなのかも、俺にはよく分からなかった。だから、良くもないし悪くもない。以上!

いの:俺も大体、みつぼりと同じかな。最初懸念してた通りなんだけど、寺で見ないとよく分からん。東京国立博物館の、毎回、日本各地世界各地から、彫刻なり壁画なり兵馬俑なりを運搬してくるノウハウってすごいよねみたいなメタ的なことは思った・・・かな。十一面観音菩薩坐像は脚と胴体をバラバラにして運び出したんだって(公式ブログ参照)。肝心の仏像に関しては、まあ、仏像ってこういうものだよね、一般的にこうだよねっていう感じで・・・。

みつぼり:うん(笑)

いの:やっぱり、その場所ありきでないと語れない気がするんだよね。千年前のものが今こうして見られるのは、地元の人々の信仰心の積み重ねがあって大切にされてきたからこそなんだろうし。その土地があってその寺があって、それでもってその仏像があるっていう、土着的なものでもあると思うんだよね。

さいとう:それはそうだよね。

みつぼり:単なる芸術品として見るだけではなくってことか。

いの:そう。寺に出向いて、仏像の前に立った時に、千年前にも誰かが同じ場所で、同じようにこの仏像に手を合わせていたんだっていう感慨も込みなんじゃないかって。

みつぼり:ほー、ロマンチストですな。さいとう君はどうだった?

さいとう:俺もそんなにインパクトある感じではないと思ったけど、でもいのが言ってる通り、お寺で見る仏像ってオンリーワンで見ちゃうから、逆に言えば展覧会として一同に会して並べられると、「この仏像かわいいけど、この仏像は違うな」みたいに、それぞれ比較して楽しめるし、「俺はこれが好き」みたいな話をするのも面白いし、ああいう形で見るのもたまにはいいんじゃないのっていう。

いの:総選挙的な。たしかに推し仏を探す楽しみってのはあるかもしれない。

さいとう:俺は薬師如来坐像が好きで、あのちょっとふっくらした感じが、なんというか抱かれたいというか、あの膝の上に乗りたいみたいな気持ちになったね。

みつぼり:穏やかな顔立ちだったね。

さいとう:西洋彫刻のリアルな筋肉じゃなくて、ふっくらとした肉付きを彫ってるのがいいよね。当時からしたら、ふっくらとした人は豊かさの象徴だったんだろうし、極楽浄土のイメージと重なったんだろうね。

いの:そうなんだろうね。

みつぼり:さいとう君、デブ好きだから。

いの:そうなんだ。

さいとう:デブ専ってことじゃなくて、存在としてのデブが好きというか。

いの:それはよく分からないけど。

さいとう:そうそう、あと気になったのは、目玉の十一面観音菩薩坐像の展示方法。あれ高いとこに置きすぎだろっていうのはちょっと思ったね。

みつぼり:十一面部分を楽しむんだったら、2階に上がって見れるとかあればよかったかもね。

さいとう:下からじゃ全体像見きれないし、あとはすごい見下されてる感じがした。仏ってそういうものなのかもしれないけど。

みつぼり:いや、仏は人に寄り添うものですよ。そういえば音声ガイドは誰がガイドしてたの? 瀬戸内寂聴

いの:なんでだよ(笑) 中年の女性アナウンサーみたいな人がメイン解説で、ところどころでいとうせいこうみうらじゅんのトークが挟まってる。

さいとう:(笑)

みつぼり:好きだと思うよあの人たちは。

いの:実際に櫟野寺に行った時のことを話してたので、お寺の雰囲気を知りたい人は聴いてもいいんじゃないかな。

さいとう:そういえば見てる時にみつぼりとも話してたんだけど、秘仏ってのはなんで秘仏なのかね。せっかくいいものが寺にあるのに。プレミアム感?

みつぼり:そんな俗な理由~? 劣化するからじゃねえかと俺は思うけど。いの君調べといて。

いの:わかったわかった・・・。

 

というわけで、調べました。えー、我らが集合知ウィキペディアによると、秘仏の発生時期や要因の決定的な理由というのは明らかになっていないようで、日本史上最初に秘仏についての記述があるのは平安の古文書だそうです。

秘仏仏教圏の中でも特に日本に見られる傾向で、一説には神道の影響があったと言われています。神社の本殿のご神体(鏡とか)は、通常我々は見ることができないじゃないですか。拝殿からそこに向かって拝むだけじゃないですか。日本は神仏習合の時代が長く続きましたから、仏像に関しても同じように、神々しいものを軽々しく人目に晒すものではないという考えに至ったのではないかという説がひとつ。それから、密教系の仏像に秘仏が多いので、密教の影響もあるのではないかとのことです。

ちなみに、一切御開帳もされず、写真撮影もNGの絶対秘仏というのがあって、長野・善光寺阿弥陀三尊像、東京・浅草寺聖観音像あたりが有名だそうです。高野山金剛峰寺のかつての本尊・阿閦(あしゅく)如来像も絶対秘仏で写真もなく、1926年に火災で焼失したため、その姿は永遠に謎とのことです。なんだかロマンが広がる話ですね。

 

※本展示は会期が1か月ほど延長され、2017年1月9日までの開催となります。ただし、クリスマスイブから元日までは休館なのでご注意を。

 

(文責:いの)