ロク-リンシャ

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座談会:『父について考える』 後編

前回の続きです。

引き続きネタバレ全開なのでご容赦を。

お題作品については前編のエントリーを参照してください。

 

ー『ネブラスカ』どうだった?ー

みつぼり:なんでモノクロなの?

いの:んー、とりあえず監督が小津安二郎をリスペクトしてる人なんだよね。だからモノクロの家族映画ってところにこだわりがあったのかもしれないってのがひとつ。それと、監督本人が言ってたのか評論かなんかで読んだのか忘れたけど、モノクロにすることで、普遍性を持たせたかったみたいなことを聞いたなあ。映画はアメリカが舞台だけどさ、世界のどこの家族にでも起こりうる話だよねっていうことなんじゃないかなあ。

みつぼり:モノクロになると急に昔のことみたいに見えてくるんだよな。その割にはあれだよね、主人公の兄貴が乗ってるのがホイール逆回転するようなゴリゴリの現代車でさ、そこに違和感というか

さいとう:ものっすごく回転してたよね

みつぼり:日本だとヤンキーが乗ってる車じゃーん、って。

さいとう:あれは違和感あったよねホイール。ものすごく早いな!って。

みつぼり:モノクロでやるんだったらもうちょっとオールド感出してくれよっていうね。

さいとう:たしかにね、あの回転をモノクロで見るのははじめてだった!!

みつぼり:思った思った!!(笑)

いの:二人してどんだけ食いつくんだよ(笑) それで、本編はどうだった?

さいとう:すげえ気に入ってるシーンは、親父が借りパクされてたコンプレッサーを、主人公兄弟がパクり返しに行くシーンなんだけど。

いの:あれいいよね。

さいとう:男兄弟がいないから幻想持ってるんだけどさ、ああやって違う生き方しててもさ、一緒にたぎれる瞬間があるってのは、うらやましいなって思った。父親関係ねえけど。

いの:車に戻った後の、あの兄貴の充実した表情がすごくいいんだよね。あとは親戚の家の息子2人が最高。主人公たちがモンタナから2日かけて来たことを嘲笑してきて、その後テレビ観てる時にも唐突に「モンタナから2日・・・(笑)」ってまた思い出し笑いしたり、あいつらほんと最低で好き。

さいとう:主人公が「つっまんねえなこいつら・・・」って目で見てたよな。

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いの:戯画化されてる部分はあるけど、でも田舎者の価値観ってあんな感じだよな、俺の出身の群馬も似たようなものだと思うし、どこの国でも一緒だなって。

さいとう:草津まで2日」とかやってんの?

みつぼり:そこまで直接的に置き換える話じゃないでしょ(笑)

 

ー物語の先にある家族ー

さいとう:親父は本当に大金が当選したと思ってたのかね。

みつぼり:親父にとって、すがるところだったんじゃないすか。閉塞した家族仲を親父だって感じてないはずがないし、万に一つでも可能性があるなら、という想いがあったんじゃないかな。

いの:実際、どこかもう耄碌しちゃってるところがあるのは間違いないんだろうけどね。意識がまだらになってるから、時には本当に当選を信じてる場面もあるんだろうし、場面によっては当たってないことを理解してる瞬間もあるんだろうし。

みつぼり:ほら、『ドリフターズ』のあの人ですよ。

さいとう:ああ、ハンニバル

みつぼり:そうそう。

いの:ここから先きっとボケがさらに進行していくんだろうし、だからこそラストシーンの親父の人生における最後の花道をああやって見せられたのにすごく感動したんだよね。

みつぼり:あのラストシーンは、これまで愚直に馬鹿にされながらも生きてきた親父が唯一報われる瞬間がここなのかなって感じた。

いの:序盤で、親父を老人ホームに入れようかみたいな話もされてたけど、あのラストシーンのあと家に帰ったらどうなるんだろうね。

みつぼり:(老人ホームには)入れないんじゃないかな。あの旅に出る前の親父の扱いではなくなっている気がする。家族みんな、やっぱり日々の生活の中で、親父の良くないところが目に付くようになっていた所で、ああやって旅に付き合ってさ。で、親父に金をせびってきた親族に対して母ちゃんや兄貴がメンチを切ったりする場面があったじゃないですか。ああやって、言語化してみないと分からないことってあるんじゃないかって思ったんだよね。自分の口から出て耳に入ってはじめて、あー自分こういうこと思ってたんだよねって再認識する瞬間。口に出して親父を擁護すること、家族を守ることを、各々があの場面で自発的にやってるんすよ。そこでわだかまってたものが解けたことで、その後のコンプレッサーをパクるシーンに繋がっていくのも俺にはすごく分かったし、それ以前の家族だったらコンプレッサーがらみのあのドタバタ劇にはなり得なかったよね。

さいとう:うんうん。

みつぼり:それはやっぱり、最初のモンタナでどれだけ家族で顔をつき合わせてても、絶対来なかった瞬間なんだろうなって思う。旅が終わって家に帰った後、「親父のためにトラックとコンプレッサー買ってあげたんだ」って話しても、旅に出る前の家族だったら「なんで!?」って怒ってただろうけど、あの経験をした家族なら、ちょっとくらい小言は言ったとしても、たぶん納得してもらえるんじゃねえかな。だから俺は最初の状況と違って、あのラストの後に老人ホームには入れねえんじゃねえのってのはそこなんだよね。

さいとう:ただ、それを経て、親父のボケが進行して母ちゃんも年取って、兄弟も自分の生活があるから老人ホームに入れるって判断があったとしても、それは全くバッドエンドじゃない。息子にあんな花道も用意してもらえて、家族にも愛されて幸せな人生だったってことになると思う。

いの:そうそれはその通りだよね。映画のラストシーンみたいな、夢みたいな瞬間はずっと続いていくわけじゃないけど、その後も現実と折り合いをつけながらの幸せな家族関係は維持されていくんだろうし、その中に老人ホームに入れるという選択があっても、それは映画の冒頭においての選択とは全く意味合いが異なるものなんだと思う。選択自体は同じでもさ。

 

―みんな父親になりたいの?― 

みつぼり:まとめに入るわけじゃないけど、それぞれの父親観がある程度分かったところで、我々はどういう父親になっていきたいのか的な・・・。

さいとう:まず父親になる気あるの?

みつぼり:俺はもう余生だから。

さいとう:早っ!!

みつぼり:なる気満々だったけどもう余生だから(※色々あったみたいです)。でもこの間、前職の会社の人たちとバーベキューに行ってさ、先輩の子ども達と戯れてたらもうね、「うわ~・・・手に入れてえ~っ、子どもかぁ~っ」てメンタルがヤバかったよね。やっぱり父性欲みたいなのはすげえある。俺らくらいの歳になって、自分自身ってこういうものだなっていうのが見えてきた時にさ、次に何に目を向けたらいいかって言うと、新しい趣味っていうのもモチベーション的に限界くると思うんすよ。

さいとう:そうだね。

みつぼり:新しい趣味を作っても、家庭を持っていない分の空いた時間を埋めるとか、健康維持のために運動するとか、そういうレベルでしかなくて、根源的な好奇心とか学習意欲っていうところまでもう行きつかねえなぁって思った時に、やっぱり子どもとかさ、無償の愛を捧げられるものを手元に置いておくってことなのかなあって。かと言って、子どもだけ欲しがって早く結婚したがってるだけの女と無理に結婚してもいい結果にならないのは見えるし。僕がまだ子どもだからさ、好きな人じゃないとなあってのはあるけど。

いの:俺は結婚願望は結構強いかな。大学時代は結婚しなくていいから子どもが欲しいとかよく言ってたけど。

みつぼり:言ってたね。当時は「うわキモッ」て思ってた。今はわかる。さいとうくんはどうなの?

さいとう:結婚する気は今はないし、子どもを作る気もないな。自分を育てる自信が無ければ子どもって持ちたくないと思ってるから。

いの: ん? どゆこと?

さいとう:今の自分に、もうひとりの0歳の自分を渡されても、育てたくないし育てられないと思うから、まだいいかなって。

いの:ああなるほど。自分の今まで通ってきたもののリプレイを見せられるのはまだ早いと。

さいとう:そう、それに付き合う自信はまだ無い。

いの:俺は、0歳というか、未就学児童くらいならどう接していいかはなんとなく分かるんだけどさ。でも小学校にあがって大学に入るくらいまでの子どもとはどう接していいか分からない。明確な自我が出てきた時に、父親としてはどういうスタンスでいたらいいのか。

みつぼり:それが分かって親になる人いないでしょ~。

いの:まあそりゃそうか。

みつぼり:例えば、人から何かしらの相談を受けた時に、何を言っていいのかわかんねえ瞬間っていっぱいあるけどさ、でもそういう状況になったらもう何を言うにしても言わないにしても、自分は何かをしなきゃいけない訳じゃん。子どもを育てるのだって、たぶんそういうことの連続なんじゃないかと思う。

さいとう:『父、帰る』の主人公の兄貴もそれだよね。

みつぼり:あー、そうかも。

さいとう:親父が死んで、じゃあどうするのってなって、「イワン、何ぼけっと見てるんだ」つって、親父の役割を引き継ぐっていう、起こってしまった状況ににひとつひとつ対処していくなかで、変わっていくしかないんだよね。

いの:今してる話って、『父、帰る』の親父がまさにそうだけど、母親と違って父親ってのは、自覚的に「なろう」としなくちゃならないのかなって気がする。

みつぼり:あー・・・そうかもねー。

いの:自分の腹の中にいたわけでもないし、言ってしまえばDNA鑑定でもしない限り、本当に自分の子かも分からないしさ。本能的なものじゃなくて理性的な部分で、父親になることに向き合わざるを得ない気がする。男親ってのは。

(この後、身寄りのない子どもを引き取るという仮定の話から、『うさぎドロップ』の展開と『高杉さん家のおべんとう』終盤について、マコーレー・カルキンについて等、しばらく脱線が続く)

 

―フィクションの中の理想の父親

みつぼり:みんなの理想の父親像が聞きたい。俺、真剣に考えてみたんだけど、『kiss×sis』の父ちゃんだった。住之江圭太の父ちゃん。

さいとう:『kiss×sis』に"父ちゃん"っていたんだ。

みつぼり:若づくりの奥さんと再婚して、めっちゃエッチしまくってるんだけど、とにかく懐が広い。

さいとう:あー、懐の広さは重要なところじゃないの。

みつぼり:自分の息子と義理の娘×2がさ、むちゃくちゃ添い寝したり乳首舐め合ったりしてんのにさ、乳首舐め合ったりしてんのにさ、「おお、いいぞいいぞ」みたいなさ。

さいとう:それは何? こんな父親が欲しかったって話? それとも自分がそうなりたいの?

みつぼり:いや、どっちでもない・・・。

さいとう:どっちでもないの?

みつぼり:父親には絶対そうであってほしくないよ。

さいとう:じゃあなんだったんだよ今の話は(笑)

みつぼり:そりゃ自分が父親になるにしても、さすがにもう少しまともなしつけはした方がいいと思うよ。だけど、自分が見てきた創作物の中で、理想の父ちゃん誰って言ったら、このくらい色んなものにユルーい人かなぁ。

さいとう:いのはやっぱり仮面ライダー好きだし藤岡弘、でしょ。

いの:いやだよ。絶対いやだよ。藤岡弘、父親だったら絶対めんどくさいよ。

みつぼり:弘、と修造は嫌だよ。

いの:すっごいベタなチョイスでいい? 『クレヨンしんちゃん』のひろしがやっぱり理想かなあ。

さいとう:ひろしを父親の理想ってのは他の人もよく言うけどさ、なんで?

いの:現実的な実現し得るラインで考えた理想となると、その到達点がひろしになるというか。

みつぼり:わかる。ちゃんと父ちゃんやるしさ、家族守るときは守るっていう。あとは目線がすごい低いし。

さいとう:劇場版のひろしはわかるぜ? でも劇場版って、ファンタジーじゃん。現実じゃないじゃん。劇場版のひろしが頼りになるって言ってもね・・・分かんないじゃん。自分の親父がオトナ帝国行ったらあのくらい頑張るかもしれないぜ?

みつぼり:いやそれは無いでしょ(笑)

 

以降『蛇足編』に続く。。。

 

(著:いの)