ロクリンシャ

三柱の人狼とそのなかま達による体当たり座談会系集団の活動報告(公式HP:rokurinsya.wixsite.com/rokurinsya & 公式Twitter:https://twitter.com/rokurinsya007)

ロクリンシャ、それは三柱の人狼とそのなかま達による体当たり座談会系集団の活動報告
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座談会:『父について考える』 前編

ロクリンシャメンバー3名は現在、父親に守られて生きていた時代を通り過ぎ、かと言って自分が父親になったわけでもない、そんな狭間の段階にいます。それは、父というものをある程度客観的な距離感でもって見ること・語ることができる時期と言えるのかもしれません。

そんな今だからこそ、父の生き様から大いに学ぼうではありませんか。
今月の座談会は、課題作品の父親、またメンバーの父親達を通して、父とは何なのか、そしてこれから自分たちはどう大人になっていくのかという、真面目回でお送りします!

 

今回の課題

課題作品1

父、帰る』(03' ロシア 監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ)


The Return (trailer)

家を出てから十数年ぶりに戻ってきた父と、彼を覚えていない息子たちとの小旅行を通じて父親という存在を描く人間ドラマ。2003年度ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞・新人監督賞をはじめ世界各国の映画祭で数々の賞を受賞した、アンドレイ・ズビャギンツェフ初監督作品。映画界では“新人”のスタッフが、同じく新人の監督のもとに集まって撮られた本作は、初監督とは思えないほど高い完成度を誇り、ロシア映画の新たな傑作として名を連ねた。 

(「シネマトゥデイ」より)

 

課題作品2

ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』(13' アメリカ 監督:アレクサンダー・ペイン)


『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』予告編

ファミリー・ツリー』などのアレクサンダー・ペインがメガホンを取り、頑固な父と息子が旅を通して家族の絆を取り戻す様子を描くロードムービー。大金が当選したという通知を信じる父とそれを怪しむ息子が、モンタナからネブラスカまで車で旅する途中に立ち寄った父の故郷で、父の意外な真実に遭遇しながらつながりを深めていく様子を映し出す。父と息子の役には、『帰郷』などのブルース・ダーンと『最凶家族計画』などのウィル・フォーテ。不器用だけれど憎めないキャラクターや、本作でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞したブルースの演技に魅了される。 

(「シネマトゥデイ」より)

   

 副読本

 「居場所」のない男、「時間」がない女 著:水無田 気流

「居場所」のない男、「時間」がない女

「居場所」のない男、「時間」がない女

 

 7月30日土曜日 17:00
市ヶ谷の某北海道系居酒屋にて

 ―『父、帰る』のここが分からない―

 いの:とりあえず感想どうなの?

さいとう:またいのが変なのブチ込んできたなと思ったよ。

みつぼり:僕の感想も、面白い面白くない以前に、この映画から家庭とか父親とかを語るってなると、自分の話とは繋がらねえなあというのが個人的な意見。

いの:俺もね、最初に観たのが10年くらい前で、その時の印象がすごく残ってて、このテーマを思いついた時に真っ先に浮かんだタイトルだったんだけど、いざみんなに周知してから見返してみると、これ語りにくい映画だなぁって思ったよね。

さいとう:やっぱり、最終的に弟のイワンが、なんで「父親」と呼んだのかっていうところがひっかかってさ、色々考えたんだけどね。

いの:パ↓パ↑ァ~(イワンの真似で)

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さいとう:考えたんだけど、 映画の中から読み取るというよりも、結局普遍的な結論にしかならない気がして。

みつぼり:たとえば途中で、「ホントはお父さんと呼びたいんだけど」みたいな葛藤があって、最後に出た「パ↓パ↑ァ~」ならさ、納得するんだけどさ。やっぱり唐突で「ええ~・・・」って。

いの:あの短期間で愛情なんてのはねえ・・・兄ちゃんの方はお父さんを受け入れてるように見えるけど、その実、愛情なんて感じてるわけじゃなくて、父親の「父親ロールプレイ」に自分も乗っかろうみたいなところがあるよね。

みつぼり:俺ああいう子どもだったんだよねえ。すげえ兄ちゃんの感じ分かる。大人の期待する子どもを演じるみたいなさあ。

さいとう:年齢差の問題で、兄ちゃんの方が社会性を先に身につけてたってのもあるんだろうね。で、これ聞いちゃいけないかもしれないんだけどさ、何やってたのあのおっさん、マジ。

みつぼり:それ分かんなくない? 一生懸命掘ってた箱もさ、俺一瞬ウトウトしてたから分かんないんだけど、あれ種明しとか無いんでしょ?

いの:うん、一緒に沈んじゃった。

さいとう:それが何かを象徴してるんだとしたらウルセエって話なんだけど。

いの:そこはねえ。

さいとう:普通の映画だったら、気を許す瞬間があって、箱の中身も最終的には分かって、「ああ僕達のためだったんだ」って泣きながら終わると思うんだけど、それを残してくれなかったから。だからいのにムカついたんだけど。

みつぼり:正直、いの君に学生の頃に借りた、寺山修司の映画を観た時の感想にちょっと近かった。かっこいいけど、かっこいいし刺激になるけど、わっかんないよ!

いの:パンフレット読むと、一応父親旧ソ連的なもので、子どもたちが現代ロシア的なもので~みたいな解釈もできるよみたいな話なんだけど、そんなのは俺らには関係ないからさ、謎解きしようなんて思って観てもしょうがないよね。

みつぼり:分かんないなりに食い下がって考えてみてもいいんだけど、今回の「父親」って話から離れていくだろうし、あんまり個人的にはここを論じてもなあ・・・。

 

 ―企画へのダメ出し―

さいとう:いのはこの映画のどこが気に入ったの?

いの:んー・・・場面場面の絵として印象に残ったシーンがたくさんあるっていう、それだけでもう映画としては気に入ってるんだけど。なんだろうな、父親ってこういうものだよねって共感できるところが俺には結構あって。

さいとう:ほーん。

みつぼり:いの君が唯一これを見せたかった理由ってそれなんだろうなって気がした。僕といの君がたまに話してる父親像から察するに、『ネブラスカ』も含めて通じてる感じはあったし、不器用っていうかさ。言わんとしてることは分かる。でもロシア人。だってさ、だって今回ロシア人とアメリカ人の話でしょ。日本のやつ1本くらい見せろや。今回語るにあたってアメリカ人とロシア人の家庭をさ、それもなんか現代芸術に寄ったようなの見せられてそれをそのまま自分に置き換えていいものかっていう、葛藤はすごいあるよね。

いの:あの、うん・・・まあね、あのね、作品の感想ってのもそうだけど、今回は語りの入り口になればいいかなと思ってね、選んだんだけどね。

みつぼり:そういう意味では『父、帰る』は俺にはむずかしかったなあ。

 

―父と息子のコミュニケーション―

さいとう:映画の話に戻るけどさ、一方的だよね。父親と息子のコミュニケーションってのは。それは『ネブラスカ』でも思った。

みつぼり:息子が望むと望まないとに関わらず父親らしいことをしたい、的な。

さいとう:息子は100万ドル別に欲しくないけど残したいみたいなさ。

みつぼり:親ってなんかそういう感じはするね。

さいとう:息子も最後に一方的にトラックあげて、コンプレッサー買ってあげんのもさ。

みつぼり:でもあれはだって、父ちゃんの望み叶えてあげたんでしょ?

さいとう:うーん、どうかな。

みつぼり:いや父ちゃん喜んでたぜ。あれに関しては喜んでたぜ。

さいとう:それで町を走って帰ってくのは、完全に息子の演出じゃん。

みつぼり:でも父ちゃんドヤ顔で、みんなの前を「あわわ・・・」って顔しながら通り過ぎていったぜ。

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いの:『父、帰る』の、「あと何分で食え」って子どもを縛ってくるのも父親コミュニケーションあるあるじゃね?

みつぼり:うーん。

さいとう:言われたの?

いの:言われたことあるよ。

さいとう:その時のアザ?これ。

いの:どこに連れていくか全く言わないのもすっごい父親っぽかった。

さいとう:その時のキズ?これ。

いの:子供からしたら父親って理不尽なもので、一緒に酒飲んで話せるようになる頃に、ようやく父親が何考えてるんだか少し分かるようになるんだよ。俺自身、父親の考えがうっすら見えてきたのってホント最近だし。

みつぼり:ちょっと前にふたりでそういう話したんだよね。なんか最近やっと親父のこと分かるようになってきたわ、っていうような着地になったんだっけ。ほら、俺ら家族と溝がある勢だから。

いの:家族ってところから離れて、ひとりの男と男として向き合えるようになってはじめて、ああこの人のこと嫌いじゃないわっていう感じにはなってきたのかな。

みつぼり:もう一回実家戻ったとしてどう? 俺うまくやれる自信ないわ。

いの:庇護に置かれてた頃と、自活してる今だと、また家の中での立ち回りは変わってくるかな。うちは父と母が仲悪くて、何かあると母がすぐ俺を味方につけようとして、俺は子どもとしてどうしても母親側につきがちだったんだけど、今ならもう少しフラットな視点で立ちまわれると思う。だからこそ、今にして思うと父親に対して申し訳ないことをしてたなっていう気持ちがある。

さいとう:一人っ子ってそういうリスクあるよね。1を0.5にはできないけど、兄弟がいて2だったら1:1にできんじゃん。うちは妹2人いるけど、「妹側が親父についてるんだったら俺母親側いくわ、逆もしかり」で、それは意識して生きてきたつもり。

いの:真田家で言えば、(関ヶ原の戦いの際に)兄が東軍について弟が西軍につくみたいな感じ。

さいとう:そうそうそう。源平で言えば、那須与一だけ源氏で兄は全員平家につくみたいな。

いの:そうなんだ!?

さいとう:『ドリフターズ』で言ってた。

みつぼり:いやでも、それはお家を残すための処世術でしょ? また違くない?(笑)

 

―各々の父親像―

さいとう:俺は親父については、小学生の頃はある程度完璧な人間だと思ってた。

みつぼり:おお。

さいとう:それが中学生ぐらいの時から少し崩れだして、高校くらいの時に、親父のパソコンの中にオカズがあるのを見て・・・。

いの:自分と同じ人間なんだって思ったんだ。

みつぼり:俺、親父のエロ本は小4か小3で見つけたぜ。この間実家帰ったら、親父の本棚にアサヒ芸能がささってて、袋とじ破られてやんの。

いの:うちは『ローレンス』っていう劇画系のエロ漫画雑誌を隠し持ってたなあ。

さいとう:友達んちの親父がエロ本隠してるとかは聞いてて、それを皆で見に行ったりとかはしてたんだけど、自分の親父がってのはちょっとショックだったよ。

みつぼり:そんだけ尊敬してたんだな。いの君はそれで言うと最初からリスペクトしてないみたいなこと言ってなかったっけ。

いの:だって、俺が小4の頃、カラオケ屋のバイトだったからね

みつぼり:ほら、すごいよねぇ。

いの:親父の遍歴を言うと、工業高校を卒業した後、10年間くらい地方銀行で勤めて、その後零細の卸売会社で働いて、そこも辞めちゃって、数か月カラオケ屋でバイトしてる時に、母親の弟、ようは俺の叔父がそれを見かねて、自分の会社に誘ってくれて今に至るという。

さいとう:ほお・・・。

いの:親族の、父に対する評価がめちゃくちゃ低いんすよ。祖父が俺の前で、他の兄弟と比べてお前の父ちゃんは出来が悪いなんて話もしてきたし。拾ってくれた叔父も、父の仕事に対する姿勢によく不満を漏らしてたりするし。夫婦仲も良くないから、母が父のいいところを話したことなんて一度もないし。そういう話をずっと聞いてきたから、父親に対する尊敬みたいなのは当然生まれなかったよね。(以下、父の不遇話が延々続く)

さいとう:スッ(無言で北海道の海鮮寿司をいのに差し出す)

いの:恵まれない子どもが施しを受けてるみたいだからやめろよ・・・まあだから、俺くらいはせめて父親の理解者になりたいなと、今は思ってるんだよね。

みつぼり:俺の親父は精神病を患っている妻を抱えて、子どももいる中で、ちゃんと育てなきゃいけないっていう自負でやってきた人だから、いの君のとことはまた違うんだけど、でも全然リスペクトできなかったんだよなあ。遍歴の話で言うと、高校を出て3,4年プーをした後、兄貴と一緒に写植の会社を興して、20年くらいやってたみたいなんすよ。それが潰れる間際の俺が小2か小3の時に、親父が消費者金融から結構な額を借金してたのがわかって、親族一同から呆れられて離婚するしない、みたいな話にもなりまして。一応話としては、パチンコとかギャンブルとかであちこちから借りてたって言うんだけど、でもたぶん違うんだよな。まあその理由は墓場まで持っていくんだろうな。

さいとう:会社の運転資金とかではないの?

みつぼり:それはおそらく違う。経営してんのは兄貴のほうだったし。まあでも、それがあって破産もしてすってんてんになってなおも、病気の母ちゃんも捨てらんないし子供もどうしようもないからってんで育ててくれてるのが小3くらいでも理解できたから、そこまでやってくれてんだったらっていう想いはあって。ていうか身の上話になっちゃってるね、映画の話ってより。

 

(後編につづく。。。) 

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記事の中でわりと言いたい放題言われている『父、帰る』ですが、自分にとっては10代のころに鮮烈な印象を刻み込まれた大事な映画のひとつなんですよ。

同監督の最新作『裁かれるは善人のみ』も、親子関係が主題ではないものの、父と息子の描写が相変わらず丁寧で素敵でした。

 

さて、おすすめの父親映画を2本紹介したいと思います。

 

『マジカル・ガール』(14'  スペイン 監督:カルロス・ベルムト)


映画『マジカル・ガール』予告編

 魔法少女(娘)と使い魔(父)のお話です。ここでもまた、父親のコミュニケーションというものは悲しいまでに一方的なのでした。

 

『あぜ道のダンディ』(11' 日本 監督:石井裕也) 


映画『あぜ道のダンディ』予告 

邦画くさい台詞回しが苦手で、今回のテーマ作品として推そうとまでは思わなかったんですが、今にして思えばお題に適した作品はこれだったかなと考えたりもします。予告編にもありますが、電気屋で意地を張ってろくに店員の話も聞かず、結果中途半端なものを買ってきてしまうというのはすっげえ親父あるあるなんですけど、みなさんのとこの親父さんはどうなんですかね。

 

(著:イノ)