ロク-リンシャ

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座談会:『この漫画が嫌いだ! 2016夏』後編

今回の課題

ミツボリ:『お嬢と東雲』奈院ゆりえ ほるぷ出版 他ポラリスコミック全般

 あらすじ:お嬢はクールでスマートなお目付け役・東雲(しののめ)のことが大好き!
 東雲が不意に見せるお茶目な一面に
 お嬢はいつもドキドキさせられてばかりだけど、
 肝心の東雲は無意識みたいで……?
 一生懸命お嬢さま×低体温系お目付け役
 ふんわり主従ラブコメディ(作品紹介ページより)

サイトウ:『ヲタクに恋は難しい』 ふじた 一迅社

 あらすじ:ヲタクな人も、そうじゃない人も 
 ニヤニヤできてキュンキュンしちゃう、あなたのためのラブコメディ!! 
 隠れ腐女子のOL・成海は転職先で 
 幼なじみのルックスよく有能だが重度のゲームヲタクである宏嵩と再会をする。 
 とりあえず付き合い始めたものの、ヲタク同士の不器用な二人に真面目な恋愛は難しくて…。(作品紹介ページより)

イノ:仮面ライダーゴーストをテーマにしようかとも考えていたが、そもそも擁護するようなファンもいない作品を取り上げても仕方がないと思った為、今回は選書なし

※あくまでも今回のテーマは「この漫画が(俺は)嫌いだ!」であることをご了承下さい。

 

 7月2日土曜日 17:30

引き続き、御茶ノ水の某名古屋系居酒屋にて

 

 

さいとう:じゃあ次は、こっちはどうだった?『ヲタクに恋は難しい』。

いの:俺はこれ、ピクシブで一時期読んでた。
一巻の発売決定の頃にピクシブのランキングで見かけて、その時に一巻の収録分くらいは読んだかな。
その時は別に悪くないじゃん、とは思ってたんだけど今回改めて読んでみると…二巻は中身無いな。

さいとう:ピクシブ内ではで歴代漫画ランキングの一位らしい。

みつぼり:これはだってウケるでしょう。絵も綺麗だし。

さいとう:だけど、俺今回これ扱うって決めた後にアマゾンのレビューとか見てみたんだけど…結構アンチも多いみたいで割とボロクソ言われてるんだよね。
だからどうしてもそれを踏まえての話にはなっちゃうんだけど、これ結局「恋愛漫画」ではないよね。

いの:一巻はまだ恋愛してたかな、と思うけど。

さいとう:そうかなあ…これムカつくのがさ、たまにこの主人公カップルが属性でお互いを呼び合うじゃない。「ゲーヲタ」とか「腐女子」とか。
そこがこれ、もうこの「宏高」と「成海」っていうキャラじゃなくその「属性」同士の陳腐な絡みを描けばいいや、っていう姿勢が垣間見えるね。
腐女子とゲーヲタが付き合ったら100%こうなる!」って言い切ってる感じが腹立たしい。
あと俺、オタクだけどこの漫画読んでて一個も「あるある」ねえしな!

いの:サイトウはまずそんな「あるある」って言えるような恋愛体験したこと無いでしょ。

さいとう:いやあるあるある……まあ恋愛じゃなくてさ、社会人オタクとしての話よ。

みつぼり:だから言ってるじゃん、これは「こうであって欲しい」っていう夢の話なんだよ。だってリア充じゃんこのキャラクター達。皆の「こうありたい」って理想でしょ。

さいとう:でも「オタクの理想の恋愛を描きました!」って開き直られてもそれはそれでムカつくんだよな…。

いの:結局このセリフの通り、「正直クソ羨ましいわ」ってことなんだよね。

さいとう:羨ましくねえわ! 羨ましいのかお前?!

いの:正直俺はこれちょっと読んで、「あ、社内恋愛良いな」って思ったよ。
いやこの漫画読んで直接思ったわけじゃないけど…どこか色々経由した結果「あ、社内恋愛良いな」に落ち着いた。

さいとう:マジかよお前…。
あとこれさ、全体的にリアリティがないってのは勿論なんだけど、例えばこのシーン。「居酒屋のカウンターでPSPやってる奴」見たことあるか?!
そういう細かいところがさあ!!

いの:このページでは社内でアニメ見てるしね。

さいとう:いや、実際会社でアニメは見てる奴はいたんだけど。

みつぼり:いたのかよ。

さいとう:今年の頭ぐらいに偉い人とケンカしてやめてっちゃった事務員の女の子、昼休みに『最遊記リローデッド』をパソコンで観てたわ。「音つけて良いですか?」とか言いながら。

みつぼり:良いわけねえだろ。

いの:でもそのエピソード、この漫画に描いてあったら「こんな奴いねえよ」って言うと思う。
だからリアリティなんて人それぞれでしょ。居酒屋でPSPもあるんじゃない? 今時スマホゲーぐらいは皆普通にやるだろうし。

さいとう:あとはキャラクター全員性格がチョロいのは何なの?

みつぼり:いやそりゃチョロくもなるでしょ…全員イケメンイケジョじゃん。みんな産毛とか生えてなさそうじゃん。

さいとう:解決してねえんだもん、問題が。例えばここ、「オタク趣味が合うってことで私で妥協してるんじゃないか」って悩むシーンとか。
結局特に何も言わないまま、イケメンが抱きしめて終了ですよ。んだよそれ!

みつぼり:……いや、恋愛ってそういうもんじゃないですか。むしろ俺はそこにリアルを感じたけどね。この漫画で唯一の。結局根本的な解決はしない、くっちゃくちゃした感じが。

さいとう:あ、そうなんですか。

いの:そこは俺らの「リアル」じゃなかったな。

みつぼり:いやホントに。こういうやり取りが面倒臭くなったら終わっちゃうんだよね。

さいとう:面倒臭いことなんもねえだろ。簡単じゃん。抱きしめて頭撫でて終了だろ?

いの:一応、このシーンがあって最後の宏高の「好きなことしてるときの成海が大好きなので」ってセリフに繋がってるから、意味はあるシーンなんだよね。
だからオタク同士で付き合ってる、っていう。

さいとう:その「好きなことをやってるときの成海」っていう描写があんまりないじゃないこの漫画。
宏高がゲームしてるシーンは沢山出てくるけど。散々言ってる同人とかも全然描いてないじゃん。

みつぼり:そこは行間を読まないと。でもそのやり取りの外で、例えばもし成海がピクシブに絵を投稿してたりする描写が出てくるんだとしたら、それと同じ比重で「仕事ができない」っていう設定も描くべきだよね。
会社内での成海が、この仲間達の輪の外で滅茶苦茶にやられてるところまでを俺は描いて欲しい。
「あーコピー間違えちゃいました―」程度のものを「可愛いからいっかー」みたいなのじゃなくて。ガチで「あいつ使えねーよな」って言われるような感じの。

さいとう:そこまでしてくれるなら俺も成海、愛せるかもしれない。

みつぼり:あともっと顔をリアルに描こうぜ…こんな手入れもしないで皆顔キレイな訳ないじゃん…。

さいとう:手入れは宏高以外はしてるんじゃない? その程度は察せる描写があると思うけど。

いの:キャラの表情がコロコロ変わるのは読んでて楽しい点だよね。

みつぼり:うん、描き方が上手だよね。ぶっちゃけ俺は好意的に読んでるよこの漫画。なんか色んなところに目を瞑りながら。「ムカつくなー」とか思いながら。

さいとう:またこれ何が鬱陶しかったかって、スマホの広告で毎日この漫画を目にしてた時期があったのよ。そこで俺は嫌悪感が急加速した。

みつぼり:あのスライムの奴と同じパターンか。

さいとう:いちいちこのキャラクター達のクソつまらねえ顔芸が表示されるのが辛かったのよ……逆にじゃあ君たち、この漫画の中だと誰が「許せる」? 誰が一番許せるのか、誰を一番殺したいのかをはっきりさせとこう。
先に言っとくと、俺はぶっちぎりで成海が大嫌いなんだけど。桂井よしあき先生に是非同人誌を描いて頂きたい。

みつぼり:目の奥にうっすらハートマークが出てきて、ぐっぽぐっぽなるのか。

さいとう:桂井よしあき先生「ゴメン宏高…ヲタクより楽しいコト、見つけちゃったよぉ…」ってダブルピースしてるの描いてくれたら、やっと本編も楽しく読めるようになると思う。

みつぼり:そんな二次創作の妄想しちゃって楽しめてるんだから、いい漫画なのかもね。さっき一回も「お嬢と東雲」の二次創作の話にはならなかったし。

さいとう:正直、漫画としての地力は全然違うよ。だってこの漫画、まず絵が上手いもん。力込めて描かれてる。

みつぼり:俺は許せないキャラは…宏高ですかねえ。勿論。
こんな何でも上手くいくわけないぞ、っていう。
成海は隣の席でキャッキャ騒いでる鬱陶しいオタク女って感じだけど、そこまでではない。

いの:俺はこの先輩キャラ二人…小柳と樺倉が許せないけどなあ。

みつぼり:好きなんじゃないのかよ。

いの:何だろう……結局は作者の話なんだけど「ちょっと大人の恋愛描いちゃいましたよ」感が嫌い。
『WORKING!!』の作者がWEB連載してた奴を読んだ感想に近いんだけど。
作者の趣味にちょっと寄った20代半ばぐらいのキャラクター達の「大人な恋愛描いてみました」みたいないけ好かなさ。

さいとう:「言葉少なめに描いてみました」みたいな。

いの:宏高と成海のコンビは好きだけど…成海、可愛いじゃん。

さいとう:嫌いだね俺は。殺したい。

みつぼり:俺は宏高の顔が悪ければそこまででもないと思う。
「あーオタクカップルも幸せなんすねー。ああいいんじゃないすかー」って言える。
こいつら美男美女じゃん。ゲーオタと腐女子じゃなくても成立するもんこの話。

さいとう:そういえば、そもそも成海が腐女子だとバレて前の彼氏に振られてたけど、そもそも腐女子ってバレたら嫌われるの?

みつぼり:今回、一人ぐらい腐女子も呼べばよかったかな。一人ですげえベラベラ喋り出して三人とも俯いて黙ってそうだけど。

さいとう:なんかその、腐女子の「迫害されてる」っていうのはどこからくるんだろう。

みつぼり:この前、地元のスーパーで30後半ぐらいのお母さんと15・6歳の娘さんが買い物しててさ、横目で見てたら、ずーーーーっと娘の方がその日の声優イベントの話してるのよ。
「今日の神谷さんはどうだった」とか「神谷さんがこう言ってた」とか超早口で捲し立ててて、お母さんずっと「んー」と「ねー」しか言ってなかったんだよね。
それを見てたら「あ、こりゃ無理だな」とは思った。可愛いとか可愛くないとかそういう問題じゃない。あのぐいぐい感はキツい。

いの:それはでも中学生らしくて可愛いんじゃないかな。だんだん社会人になっていくにつれて、引っ込められるところは引っ込められるようになっていくんだよ。

さいとう:この漫画、オタクである故の葛藤みたいなのが全然無い。登場人物がオタクしか出てこないからなんだけど。

みつぼり:かなり閉じた世界なんですよ。

さいとう:この漫画の中では、腐女子について誰も何も悪いとか言ってないじゃん。主人公だけが「私は腐女子だから、迫害されるから、生きにくい」「恋愛が難しい」って喚いてるだけなんだもん。
誰も何も言ってないじゃん。こんな生きやすい世界ないぜ?

みつぼり:顔も可愛くて服もそれなりのセンスがある描写があるし、擬態も出来る。宏高といるときもずっとオタ話捲し立ててガス抜きしてる感じでもないし。
何も生きづらいところが見当たらないよ。「宏高といるとウマが合って落ち着く」ってのは読めるけど、それ別にオタク趣味関係ないじゃん。
で、ウマが合うのは昔っからで、二人は幼馴染です、と。

さいとう:「ヲタクに恋は難しい」って言うなら、この幼馴染設定自体凄く邪魔だと思う。そもそも入れちゃいけないステータスだよこれ。

いの:確かにそうかも。美男・美女の幼馴染がいるっていうのがそもそも普通の人にはない程に「強い」設定だし、その強さはオタクに限った話じゃないからね。

みつぼり:まあこれだけ腐しといてから言うのもなんだけど、これ本当にオタク全開、コミュ障全開の二人だったら漫画にするのは難しいんだろうね…。

さいとう:続刊以降はどんな展開になるのかな。さっきから言ってるけど所謂「負」の展開が出てくるなら、もう少し読んでみたいかもしれん。

いの:成海の元カレが出てきたりかな?

さいとう:普通の漫画だと有りそうな展開だけど、この漫画の作者と読者はそれを求めてない気がする。

いの:そうだね。ハラハラドキドキはあんまりなくて、安心して気楽に読めるような漫画だと思うし。
あ、でもよく成海を「元カレが何人もいた」って設定にしたなあって思った。女性読者に寄せてきてるのかな。

みつぼり:それかもしれないし、結局タイトルにかかってるんじゃないの。『ヲタクに恋は難しい』っていう。

さいとう:ああ成程、「今までは」恋は難しかったってことか。

みつぼり:主人公二人見てると超イージーモードだしね。
僕はこの漫画結構好意的に見てたんだけど、段々ムカついてきたな…。

さいとう:宏高は成海のことを好きになったのは、さっきも言ってたけど「趣味を楽しんでるときの成海が好き」っていうのはわかった。
逆に成海が宏高を好きになった理由がもう、ほんと、顔しかねえのが最高にムカつくね「久々に会った幼馴染が思ったよりイケメンだわ」で付き合ってんだぞこいつ。

みつぼり:いやちょっと思うのが、漫画とか映画・小説の恋っていうのは確かに物語性・必要性があって然るべきなんだけど、現実男女が付き合うのに何が必要とか無くないですか。
俺が成海を別に嫌いじゃないのは凄い女の子っぽい考え方をしてるように見えるからなんだ。「別にそんな深い理由はないけど向こうから好意を向けられていて、昔から知ってるし趣味も合うから付き合おう」って凄い納得できるし軽さが一貫してる。
そんなに深い理由がなくてもいいじゃん。相手に好きって言われればほだされて好きになることもあるだろうし。最初っから相思相愛なんかそうそうないっすよ。

さいとう:……まあ、そうかもしれないけど(殺してえなこいつも)。
じゃあ、そんな話を漫画にして、ピクシブに公開して、単行本にして、WEB広告にして、俺のスマホに表示させるんじゃあねえよと。
そっちがしつこく見せてくるからじゃあちょっと、って読んでやったら結局「顔が良いから」の恋愛しかしてねえじゃねえかふざけんな。と、そういう話に戻るんですよ。

みつぼり:いや、君のスマホ云々は知ったこっちゃないけどさ。

さいとう:一時期ずっとこの漫画と『親なるもの 断崖』だった。最近はずっと『善悪の屑』だけど。

みつぼり:『スライムだった件』は俺も一時期鬱陶しかったけど。

さいとう:『親なるもの 断崖」はちょっと気になったから立ち読みしちゃったよ。

いの:広告効果抜群じゃん。

さいとう:抜群だよ。『ヲタクに恋は難しい』も俺のスマホに広告出しまくったお陰で今こうして俺達三人分、三冊の単行本が売れてるからね。

いの:いけ好かない作品ではあるけど、何か言いたくなる作品ではあるってことだね。

さいとう:そうか……あ、この二巻でできた宏高の弟は何なんだろう。こいつは何しに出てきたの?

みつぼり:そりゃ女性読者がハスハスする為だろ。

さいとう:形だけかも知れないけど男性読者へ向けたサービスカットめいたものもあるけど、この漫画を楽しんで読んでる男っつうのはどういう人種なのか知りたいわ。

みつぼり:今、三人ともめっちゃ楽しんで読んでるじゃん。

 

以降『まとめ・雑談』編に続く…

(著:サイトウ)